八王子市夢美術館ではこの夏、独創的な世界「アタゴオル」や「宮沢賢治作品の漫画化」で知られる異才の漫画家ますむらひろし氏の展覧会を開催します。
ますむらひろしは1973年「霧にむせぶ夜」(週刊少年ジャンプに投稿、手塚治虫賞準入選)で漫画家としてデビュー、1975年からは月刊漫画ガロで「ヨネザアド物語」を発表し、翌年には「アタゴオル物語」等、徐々に独自の空想的な世界を漫画作品として描きはじめます。その後、漫画家としての発表の媒体が、それほど多くは無かったにも関わらず、ますむら作品は多くの読者に支持され、やがて大手企業のCM等のキャラクターに起用されるなど次第に幅広い人気を得てゆきます。これは通常、漫画が大ヒットする例とは異なる成功例と言え、ますむらが、独自の世界「アタゴオル」シリーズなどをある種自由な発想で描き、長く発表し続けてきたことが一つの要因と言えます。その結果、異才の漫画家が創る独創的な世界は、月日を経て行く中で多くの人々を魅了することとなり、ますむら作品は現在でも読者の間で連鎖的にそして静かに広まり、新たなファンを獲得し続けています。
その一方でますむらの一種卓越した作風の根底には、自身が敬愛し、影響を受けた宮沢賢治の世界があります。ガラス細工のように繊細な賢治の童話の世界を、ますむらは独自の観点と画風で見事に描き、読者はもちろんのこと、賢治の研究家の間でも高い評価を得ています。
本展覧会では、読者主導で根強い人気を得ている、ますむら作品の魅力を余すことなく紹介。数多くの原画をはじめ、作品設定資料を通して「ますむらひろしの世界」の魅力の秘密に迫ると同時に、文学的漫画と評される、ますむら作品を通して宮沢賢治の世界の魅力を再発見する初の試みです。
「アタゴオル」とは…
ますむらひろしの代表的なシリーズ作品。現在までに「アタゴオル物語」「アタゴオル玉手箱」「アタゴオル」「アタゴオルは猫の森」の4つのシリーズが発表され、主に読み切りの短編が作品の中心となっている。立って歩く猫と人間が同じ言葉をしゃべり、アタゴオルと呼ばれる空想世界を主な舞台として、主人公ヒデヨシ(猫)の巻き起こす数々の騒動をきっかけに様々な物語が展開される。
※アタゴオルの名は作者(千葉県野田市在住)地元の最寄り駅東武野田線愛宕駅から、アタゴオルシリーズに先駆けてつくられた「ヨネザアド物語」は作者出身地の山形県米沢市からその名がつけられた。
作者プロフィール ますむら ひろし
1952年10月23日、山形県出身。
20歳からマンガを描きはじめ、1973年に「霧にむせぶ夜」で第5回手塚賞準入選しデビュー。
後に「ガロ」でも入選。数多くの宮沢賢治の小説を漫画化。中でも『銀河鉄道の夜』は漫画原作をもとに映画が制作される。
ますむら漫画は文学的な漫画と評価される中で、独自のファンタジー世界を描き「アタゴオル」は当時の大手食品メーカーがシチューのCMのキャラクターとして起用するほど、ほのぼのとしたキャラクターと世界観が人気を得てシリーズ化された。
現在、月刊「コミックフラッパー」(メディアファクトリー刊)にシリーズ最新刊「アタゴオルは猫の森」を連載中。2006年秋に劇場アニメ化。
※イーハトーブ賞とは岩手県花巻市が制定した賞で、賢治精神を活かした実践的な活動を行っている個人や団体に贈られる。忠実な考証で賢治作品を漫画化し、エッセイ「イーハトーブ乱入記」を著したますむらひろし氏が選ばれた。
20歳からマンガを描きはじめ、1973年に「霧にむせぶ夜」で第5回手塚賞準入選しデビュー。
後に「ガロ」でも入選。数多くの宮沢賢治の小説を漫画化。中でも『銀河鉄道の夜』は漫画原作をもとに映画が制作される。
ますむら漫画は文学的な漫画と評価される中で、独自のファンタジー世界を描き「アタゴオル」は当時の大手食品メーカーがシチューのCMのキャラクターとして起用するほど、ほのぼのとしたキャラクターと世界観が人気を得てシリーズ化された。
現在、月刊「コミックフラッパー」(メディアファクトリー刊)にシリーズ最新刊「アタゴオルは猫の森」を連載中。2006年秋に劇場アニメ化。
1997年
『アタゴオル玉手箱』で日本漫画家協会大賞を受賞。
2001年
第11回イーハトーブ賞受賞
※イーハトーブ賞とは岩手県花巻市が制定した賞で、賢治精神を活かした実践的な活動を行っている個人や団体に贈られる。忠実な考証で賢治作品を漫画化し、エッセイ「イーハトーブ乱入記」を著したますむらひろし氏が選ばれた。