ムットーニ氏(本名 武藤政彦)は、1956年に横浜市に生まれ、現在は八王子と同じ多摩地域の国立市に在住するアーティストです。その作品は箱などに仕込まれた人形や様々な演出装置によってある物語が展開されるというもので、自動人形からくり箱とも言われます。アーティスティックでありながらも、油絵や彫刻といった既存のファインアートとは異なるこの表現、これらはしばしば西洋のオートマタ(自動人形)や日本のからくり人形のようと称されることがあります。しかし、似ている点はあるにせよムットーニ氏の作品は人形や装置の多様な動きに加え、音楽、効果音、光(照明)、そして時には作家本人の語り(口上)などが絡み合い、観客はまるで映画や演劇を観ているような感覚に陥ります。こうした印象は作品の主役があくまでその場で繰り広げられる物語や空間にあり、人形や動物、モノなどのリアルな動きの再現にないという点でオートマタなどとは違った独自の表現方法と言えるでしょう。故にムットーニ氏の作品は総合芸術と言われ、また、そのことから作家本人のみならず作品そのものがムットーニと呼ばれることがあるのです。今から20年あまり前に登場したムットーニ氏の自動人形からくり箱、その独特な表現に魅了され今日では各界をはじめ多くの一般のコレクターや熱狂的なムットーニファンが存在しています。
今回の展覧会は、特集展示「ムットーニ ワールド」プレビュー展と題し、来年度当館で開催予定のムットーニ氏の特別展に向けた導入展覧会として開催します。過去に登場したムットーニ氏の作品から代表作を含め数点をセレクトして展示、作家本人による上演会も交えながら、光、動き、そして音楽と言葉が絡み合った箱の中の物語「ムットーニワールド」を展開します。
作者プロフィール
ムットーニ(本名 武藤政彦)

1956年横浜生まれ。工場が立ち並ぶ京浜工業地帯で少年時代を過ごす。家に帰ると、その日見て感じたモノを油粘土で再現して遊んでいた。十代半ばから油彩画を描き始め、高校卒業後、創形美術学校に入学。卒業後、東京都国立市にアトリエを構え、のちに再び粘土による人形制作に没頭。人形、光・効果音、背景の転換などの要素を詰め込んだ「箱」が、電動の仕掛けによりストーリー展開していくという独自の世界を確立する。自動人形からくり箱と称された作品は国内外で評価を得ている。現在、大阪成蹊大学芸術学部客員教授。
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撮影・川上弘美